口当たりよくペーストになったイカの濃厚なうま味の中に、イカスミのスモーキーな香りの奥に潜むシトラスの香りは、タイ料理も使われるバイマックル(コブミカンの葉)だろう。付け合わせのシトロン(レモン)・コンフィとニンニクの利いた雲のようにふんわりした食感のアイヨリソースが、濃厚なうま味を切りながら食感のアクセントをも生み出し、何度口に運んでも新鮮なイカのおいしさに出会える――。
Twitterを中心にSNS上で活躍しているロドゥラシェフの「剣先烏賊とイカスミのラグー クスクス添え」は、食べ進めるのがにぎやかで楽しいレストランクオリティの煮込み料理です。
ラグーは煮込み料理のこと。ロドゥラシェフの料理の原型になっているのは、南フランス・ラングドック地方の港町・セートにあるイカを輪切りにしてトマトで煮込んだ伝統料理です。セートは、地中海沿岸ではフランス最大の漁港で、良質な魚介類を使った料理が特徴です。さらに17世紀後半に国王のルイ14世の勅命によって建設されたミディ運河の地中海側の終着港として発展、ヨーロッパとアフリカや中東、アジアを結ぶ国際港として発展した歴史を持ちます。
そうした背景を持つセートの料理らしくロドゥラシェフは、スペイン・バスク地方や北アフリカ、東南アジアの食材を取り入れてオリエンタルな香りをまとったモダンな料理に仕立てなおしています。
もちろん文化的な側面だけでなく、イカの捌き方やアサリのジュの取り方、自家製マヨネーズの基本的な作り方など料理の学びも盛りだくさんです。