オッソブーコは、イタリア北部の都市、ミラノの郷土料理です。筋肉質で筋もある仔牛のスネ肉をやわらかくなるまで煮込むことで、肉はホロホロとやわらかくなり、さらに筋のゼラチン質が煮汁に溶け出すことで、トロリとしたうま味たっぷりのソースになります。
白ワインとブロードで煮込んだのちに、仕上げに刻んだレモンの皮とニンニク、イタリアンパセリなどを和えた薬味「グレモラータ」で酸味でさわやかに食べるのがミラノのオッソブーコの特徴です。これをスネ肉の骨に詰まった骨髄を加えたサフランのリゾットと一緒にまるごといただく。寒いミラノの冬を温める煮込み料理です。
イタリアにトマトがない時代の料理
オッソは骨、ブーコは穴という意味があるとおり、骨付きの仔牛スネ肉を輪切りにして煮込み、骨ごと盛りつけます。歴史は明らかではありませんが、中世にはすでにあったとされるとても古い料理です。
さまざまあるオッソブーコのレシピの中でも、「トマトを使わないレシピが伝統的なのではないか」と関口シェフはいいます。というのも、イタリアを代表する食材である「トマト」は、1492年イタリア北西部の港町ジェノヴァの船乗り、コロンブスが南米アンデスからトマトを持ち込む以前はヨーロッパになかったといわれています。トマトを使わず、香味野菜をしっかり炒めた「ソフリット」でうま味とコク、鶏などのブロード(出汁)で作るのが、古いオッソブーコではないかと考えているからです。
「ただ、レストランのように大量に作る場合は、トマト抜きのレシピでいいと思うのですが、今回のように少量を家庭で作るには、うま味がちょっと物足りない」と関口シェフ。ソフリットとブロードでベースを作りながらも、少量のトマトペーストを使って家庭でもおいしく作れるレシピにアレンジしています。
8月に発売していた「グアンチャーレからつくるアマトリチャーナニョッケッティ・サルディ」では、10日間かけてつくる塩漬け豚「グアンチャーレ」や、ニョッキボードを使った手打ちパスタのレシピを考案し、たくさんの人たちを成功に導いた関口シェフ。文句なしのベスト・ティーチャーが贈る新しいレシピ「オッソブーコ」でも、煮込む前に焼き色をしっかりつけるポイントや、世界一高級なスパイス、サフランを使ったミラノ風リゾットの作り方、家庭でも手軽に取れるブロードなど、前回と同様盛りだくさんな内容で盛り上げてくれます。