2月 13, 2022

何度も作って手際がよくなれば、料理はおいしくなる

何度も作って手際がよくなれば、料理はおいしくなる

清水美絵|カンティーナ・アルコ 

私の料理は、見たものを中心に作る料理です」という清水美絵シェフは、「だから料理を作ることに迷わない」といいます。

レストランのシェフのように自分を表現するというよりは、自分の記憶のなかの料理を作り上げることをしています。『自分が食べてきたものがこうだったから』ということであれば、私ははっきりと言えるんです。イタリアで食べた料理がおいしかったから、その味に近づけるように作り上げていく。そのことを、ずっと続けています

新しくなったシェフレピでは、清水さんがオーナーシェフを務める「カンティーナ・アルコ」で普段から出しているメニューのなかから「南イタリア料理に学ぶパスタの作り方」と題した全5回のレッスンを考案しました。清水シェフが南イタリアで見てきた作り方をそのまま学ぶことができます。

パスタは手打ちに乾麺、トマトも使い方がすべて違うレッスン

イタリア料理らしい『パスタ』『トマト』『チーズ』『オリーブオイル』を使って全5回のレッスンを考えてみました。とくにパスタは、小麦粉に水を加えて練って作る手打ちパスタをロングとショート1種類ずつ。乾麺も南イタリア発祥の食材ですので、ロングとショート2種類。その他、意外に思われるかもしれませんが、イタリアではパスタの一つとしているニョッキをジャガイモで作ります」と、清水シェフはレッスンのポイントを説明します。

ほかにも、たとえばトマトは、STEP1の「スパゲッティ・アッラ・ペスカトーラ 漁師風スパゲッティ」では、トマト缶からトマトソースを作ります。さらに残ったソースは冷凍保存して、STEP3の「ソレント風ニョッキ」のソースに使うなど、汎用のアイディアを知ることができます。

さらにSTEP4の「ズィーティとナポリ風ポルペッティ」では、イタリア風肉団子のポルペッティを煮込むのはトマトソースではなくトマト缶を使用。STEP2の「ブジアーテのトラパネーゼソース」では生のトマトのフレッシュさを加えたりと、一言で「トマト」といっても、缶と生、缶から作った自家製トマトソースの使い分けを知ることがでます。

なおポルペッティは、イタリアのレストランなどではパスタの具材としてではなく一品料理としてもメニューに載るものです。レシピを覚えればメイン料理として再度作ることもできます。

前述のトマトソースのほか、成形したパスタやパスタソースなどの保存方法も説明しており、レシピを学ぶだけでなく、保存や応用の知識が得られるのもレッスンの特徴です。

ちょっとの手間で味がよくなることは伝えたかった

ほかにも料理上手になるためには、同じレシピを繰り返すことが大事と清水シェフはいいます。

同じレシピをやっても、重ねていくと手際がよくなるんですよ。それに、素材のちょっとした違いもわかってくる。そうすると料理がおいしく作れるようになるんです。ですので、料理上手になるためには同じ料理を何度もトライしてほしいですね」

5回のレッスンを考える際に清水シェフは、「できるだけ作りやすいものを考えた」といいます。特別な調理道具が必要だったり、難しすぎると料理することが億劫になってしまう。イタリア料理はあくまで、マンマ(イタリア語でお母さん)が毎日作るものだからと、作りやすくわかりやすく伝えられるレシピにすることも考えました。

そのなかでも、ひと手間でおいしくなるようなことはレシピに入れていきたいなと思いました。たとえば、ニョッキを作るときに、ジャガイモをゆでるのではなく蒸したものを使ったり、サルシッチャをしっかりマリネしたりするのは、行程が増えたりするわけではないですが、やり方を変えるだけで味がグッとよくなるようなことですね

とはいえ、何度も同じ料理を飽きずに作るのは、根気がいります。そんなときは、食材を変えてみるのも方法だといいます。たとえばSTEP5の「オレキエッテのサルシッチャと ブロッコリーのソース」ブロッコリーのソースをホウレンソウに変えたり、手打ちパスタではなく、乾麺のロングパスタにしてみるなどです。

バリエーションが違うと調整しやすくなりますからね。幸いパスタの種類は、たくさんありますから」と笑う清水シェフ。他にも使うチーズを変えてみたり、トマト缶のメーカーを変えてみたりと、少しずつ変えられる食材が多いのもイタリア料理の良いところでもあるといいます。

今回は、パスタでしたが、南イタリア料理のメインにもおいしいものはたくさんあります。よく知られているカンパ―ニア州の漁師風料理『アクアパッツァ』や、オレガノやイタリアンパセリ、ニンニクなどを加えたトマトソース『ピッツァイオーラソース』で牛肉や仔牛を煮込んだりする料理など。今回のレッスンで、南イタリア料理に興味を持っていただけたらうれしいですね

南北で大きく食文化が異なるイタリア

なお今回のレッスンで「南イタリア」と呼んでいる地域は、カンパーニアやアブルッツォ、モリーゼ、プーリア、バジリカータ、カラブリア、シチリア、サルデーニャの8州を含むイタリア南部を指します。

南北に長いイタリアは、北部、中部、南部に分けられます。イタリアの地形をみてみると半島の中央にアペニン山脈が南北にわたって背骨のように連なっています。そのため起伏にとんだ地形が多様な気候風土を生み、山と里、岸と海が豊かな自然の恵みをもたらしているといえます。

そうしたイタリアの多様な気候風土は食にも現れています。たとえば、酪農が盛んな北部はバターを使う料理が多いですが、中南部は温暖な気候を生かしたオリーブオイルの栽培が盛んで、それが料理にも多様されています。

南部はトマトの栽培に適した地でもあり、トマトを使った料理が多いのが特徴。トウガラシやニンニクを使った料理を好み、地中海の海産物やモッツァレラなどのフレッシュチーズも南イタリアの特徴的な食材です。

また、主要穀物である小麦をみても南は硬質小麦、北は軟質小麦の栽培が中心になっています。今回のレッスンで学ぶパスタを見ても、グルテンの含有量が多い硬質小麦を使う南イタリアでは、水を加えると様々な形に成形しやすくなるため、オレキエッテやブジアーテなどさまざまな形の立体的なパスタが生まれています。

一方、軟質小麦粉を伝統的に扱う北では、グルテン含有量が少ないため成形しにくいですが、玉子を加えて繋ぐことで薄くのばして使えるようになり、ラビオリや細い麺のタリアテッレといったパスタが生まれたといえます。

そんな背景を知ったうえでレッスンを体験してみると、レシピの理解度が高まるはずです。南イタリア料理を楽しみながら学んでみましょう!



清水美絵●しみず・よしえ
京都市生まれ。手に職を付けたいと高校卒業後、京都調理師専門学校へ。卒業後、京都・一乗寺の老舗イタリアン「トラットリア アンティコ」に入社。社内研修の一貫でトスカーナ州シエナを訪れたことがきっかけでイタリアに魅了される。以来、イタリア旅行をしながらイタリア料理を学ぶ。1年間のイタリア留学では、南イタリアのカンパーニャ州でレストランに入って研修をする。帰国後、2014年に京都・蛸薬師通りに自身がオーナーシェフを務める「カンティーナ アルコ」をオープンさせた。
カンティーナ・アルコ ▶ 店舗サイト 清水シェフ ▶ Instagram

 

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