11月 01, 2021

料理が好きで楽しいから、何でも自分で作りたいと思うんです

料理が好きで楽しいから、何でも自分で作りたいと思うんです

プルマン東京|福田浩二

ラムシャンク(骨付きスネ肉)って、けっこう筋肉質な部位なんです。だから、焼いておいしい肉なわけでもないし、煮込んでもホロホロとほどけるように食べられるわけでもない。だけどすごく濃い味が出せる部位なんです

オーストラリアやニュージーランドで10年以上活動拠点を置いて活躍してきたプルマン東京のエグゼクティブシェフ、福田浩二さんは、牛肉とともにオセアニアの代表的な食材であるラム肉をこよなく愛するからこそ、難題ともいえる部位をおいしく食べる方法を考えたくなるといいます。

オーストラリアやニュージーランドにいたころに、ラムシャンクは比較的に安く買えたので煮込みにしてよく食べていたんですよ。赤ワインでマリネして煮込んだり、クレソンと一緒に煮たりしてフラットメイトと一緒に食べたり、ホームパーティに作ってもっていったりしてました。『そういえばラムシャンクは誰もあまり作ってないな』と、思いまして、海外にいる時は結構作った料理だったですけど、おんなじやり方ではなく、ラムシャンクの煮込みというのを面白いかなとふと思って、最近よく作っています

ラムシャンクの煮込み自体は、イギリスのパブで食べられるような大衆料理。骨付きのままスネ肉が1本まるごとでてきて、フォークとナイフで分けながら食べすすめます。「今回は、それとはまったく違う仕立てになっています」という福田シェフは、どんなイメージを組み合わせながらメニューを組み立てていったのでしょうか。

レストランの煮込み料理のようなうま味を家庭でどう作るか

レストランで煮込み料理を作る場合、たとえば羊を煮込むなら羊の骨、豚を煮込むなら豚の骨でとった出汁のうま味をベースにして煮込みます。でもさすがにご家庭でラムの骨を煮出して出汁をとるのは難しいので、今回は水から炊いています。そのため、出汁以外のところでうま味を作らないといけない。そこでラムシャンクを、ブライン液でマリネしてからスモークして煮込むことで、燻製香による深い味わいがスープに移す。それこそベーコンを煮込むようなイメージで、複雑なうま味と風味があるスープができるんです

加えて骨付きのまま煮込むので、骨の中にある骨髄も溶け出してうま味とコクが深まると福田シェフはいいます。

さらに家庭でうま味を作りやすいと考えたのが「」です。今回は、ヨーロッパで広く使われ、豆のような突起がくちばしに似ていることから名付けられた「ヒヨコ豆」や、腎臓(kiidney)に形が煮ていることから名付けられた「キドニービーンズ」(赤インゲン豆)という2種類の豆を使用しています。煮ることでところどころで豆が煮崩れて、とろみが生まれます。このとろみがソースのようになって、うま味が舌の上に残りやすくしていると福田シェフはいいます。

自分自身が豆系が好きなんですね、乾燥の豆を戻してから炊いて、クタクタになるようなお豆が好きです。今回使ったキドニービーンズは、アメリカ南部からメキシコにかけての郷土料理である豆と肉のトマト煮込み『チリコンカン』に使われているので知ってらっしゃる人もいるかと思います。今回のレシピは、もともとはイギリス料理ですが、お豆を加えていったのはこの南部のアメリカをイメージしています

さらにクタクタに炊いた豆のアクセントとして、プチプチとした食感のスペルト小麦を加えています。このスペルト小麦は、小麦の原種といわれ、グルテンが少なく小麦アレルギーを発症しにくい食材といわれています。 食物繊維などを豊富に含み栄養価も高く、 キヌアやアマランサスといった食材とともにスーパーフードのひとつとして知られています。


作るのが好きで楽しい、何でも自分で作りたい

ハムやベーコンの作り方から学び、イギリスやアメリカ、オセアニアのローカルフードといった世界の料理からインスパイアを受けてオリジナルのレシピを作り上げる。福田シェフの発想の源は、どんなところにあるのでしょうか。

作るのが好きで楽しいからですかね。シャルキュトリのアイディアは、たとえばお店だったら豚とか仔羊は、1頭買いすることもあるんです。そうすると、ロースやフィレというのは焼いてメニューに入れられますが、焼いてもおいしく食べられない部位が出てくるわけです。それでも、すべての部位を使いたいじゃないですか。そうすると、今回のように煮込みにしたり、ハムを作ったりするとおいしく食べられるので、いろいろと作り出すんですよね。そういうことが好きでやっちゃうんです

豆も好きだから、いろいろな国の豆を使いたくなる。スパイスも好きなので、インドや東南アジアのスパイスも学んでみる。「好きなものを集めてみて、煮込んでみたらおいしいのかなぁって思って作りました」と福田シェフは、いとも簡単そうに説明してくれますが、世界各国の料理や食材をどん欲に吸収し、それを料理にしていく姿勢は、そう簡単にはできません。それこそが、福田シェフが作る料理の最大の魅力といえます。

思いつきでやっちゃうんで、うまく説明ができないんですけどね(笑)。でも今回のレシピでいったら、途中で調節できるようにしているんですよ。作ってみて『やっぱり足らないな』って思ったら、ビネガーを入れたりトマトペーストを入れたり、甘い食材を入れると、ベースに深みが増すとか、味のバランスでおいしくすることはできます。それよりも大事なのはどう食べてもらいたいかです。今回は、スモークの香りを出しつつ、お豆を食べていただきたいというイメージをもって、そこからバランスをとっていっています


大変だけどいろいろ応用できる料理

今回のレシピを見てただくと、4時間もマリネするとか、1時間スモークするとか出てますよね。それからさらに3時間煮込むとか、途中で心が折れるんじゃないかと感じるかもしれないんですけど、基本的にはほったらかしでできるので、ぜひチャレンジしてもらいたいですね

レシピを無事に“完走”できれば、レシピのひと部分を抜き出して、1つの料理として作ることもできます。

たとえば、ブライン液でマリネする方法は、今回のレシピのまま鶏の骨付きモモ肉に変えて皮目をパリッと焼き上げ食べてみてほしいと福田シェフ。ポイントは、ラムシャンクと鶏モモ肉の重さを同じにすること。マリネによってうま味が増し、保湿効果も加わってジューシーな鶏モモ肉のグリルを作ることができます。

煮込みのベースになっている香味野菜とスパイスの使い方は、そのままインドカレーのベースとしても応用可能。好みの肉や野菜を加えて、スパイスから作るカレーができあがります。

煮込み料理のポイントは、温度帯です」と福田シェフ。煮込みの温度が低いと、食材に火が入らず煮込みにならない。動画で説明しているようなフツフツと沸くような温度帯をキープし続けることが大切だといいます。

そのためには、火加減に注意をしてみてください。常に温かい状態を保つ。火が弱すぎると、ただの液体に浸けているだけになってしまう。温度帯でいったら90℃くらい、脂があれば100℃以上になっている。かといって沸かし過ぎると液体が煮詰まって、味も濃く辛くなってしまうし、焦げやすくもなる。難しいなと思うかもしれないですが、お料理好きな方でしたら、たとえば肉じゃが作るときってそんなに火加減のことを考えないですよね、ゴール目指して食材に火が入るように煮ていくじゃないですか。そういう風に考えていくと煮込みはおいしくできると思います

 

福田浩二●ふくだ・こうじ
大阪府出身。1990年、食品産業高等学校を卒業。ヒルトンプラザ大阪「ハーレークインインターナショナル」で料理人としてのキャリアをスタート。1998年にニュージーランドに渡ってからは拠点を海外に移し、オーストラリアで「Salt by Luke Mangan」 のオーナーシェフであるルーク・マンガン氏に出逢う。同氏と一緒に世界を飛び回り、数々のレストランの開業をエグゼクティブレベルで経験し、感性と技術を磨く。2006年に帰国し、約5年に渡りルーク・マンガングループの新店舗開業に精力的に努め、その後、2011年 「Salt by Luke Mangan」「 World wine Bar」 エグゼクティブシェフに就任。その後も、オセアニアコンセプト「Terra Australis」のエグゼクティブシェフに就任。以降も、オーストラリアングリル& シーフードレストラン「South」、新丸の内ビルにあるNZコンセプト「Zealander」の開業を成功させる。2019年、東京・田町のプレミアムホテルブランド「プルマン東京」のエグゼクティブシェフに就任した。

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文/kanami、江六前一郎